東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)26号 判決
一 請求の原因(一)ないし(二)の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、審決を取り消すべき事由の有無について検討する。
(一) 本願商標および引用商標のそれぞれの構成、指定商品、登録出願日、ならびに引用商標の登録日についての審決の認定は原告の争わないところである。
(二)1 右争いのない本願商標の構成よりすれば、本願商標からは「ジエムス」の称呼が生ずることは審決認定のとおりであり、この点に関する審決の認定理由は当裁判所も正当として是認できるものである。
2 そこで、引用商標からは「ジエイムス」の称呼を生ずるとした審決の認定の当否について検討する。
「JAIMS」は一定の語義を有する既成の外国語でないからその読み方は一定していないとしても、成立に争いのない乙第一号証の一、二によれば、英語の綴字中「ai」の文字部分が「ei」と発音される事例が多いことが認められるから、わが国における英語の普及程度、すなわち英語が唯一の義務教育の教科たる外国語であり外来語も大部分が英語である現実から考えると、引用商標にあつてもその構成中の「AI」の部分は「ei」と発音され、「JAI」の部分は「ジェイ」(<省略>)と「MS」の部分は「ムス」と発音され、全体として「ジエイムス」(<省略>)と読まれる場合が決して少なくないと認められる。
原告は、「JAI」の後に鼻音「M」が続いている場合は、「ジヤイム」と読むのが自然であり、「JAIMS」は「ジヤイムス」と読むのが自然であると主張する。
たしかに、当裁判所も「JAIMS」から「ジヤイムス」という称呼も生ずることを否定するものではないが、前記のように「ジェイムス」という称呼も生じ、しかも右のように称呼される場合は決して少なくないと認めるものである。また、成立に争いのない甲第九号証の一ないし六、第一〇号証によれば、「JAIMS」は「JAPAN―AMERICA INSTITUTE OF MANAGEMENT SCIENCE」(日米経営科学研究所)の略称として用いられている事実が認められるが、それだからといつて、一般の略語(例えばU.S.A.)のように「.」で区切られていない以上、引用商標から「ジェイムス」と一連に読む称呼が生じないとする根拠とはなりえない。
そうだとすれば、引用商標からは「ジェイムス」の称呼が生ずるとした審決の判断は正当というべきである。
3 そして、本願商標よりは「ジェムス」の称呼が、引用商標よりは「ジエイムス」の称呼が生ずる以上、本願商標と引用商標とが称呼上類似しているとみるべきことは、審決認定のとおりであり、この点に関する審決の認定理由は当裁判所が正当として是認できるものである。請求の原因(三)3において原告が主張しているような事情があるとしても、引用商標が現に登録されている以上、右の判断を左右しない。
(三) 右のように、本願商標と引用商標とは指定商品が同一で称呼上類似しているとみられる以上、特段の事情がない本件の場合、本願商標と引用商標とは類似するというべきであり、審決に誤まりはなく、審決を取り消すべき事由はない。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>